2018.05.0614:11
【創作】提供者
小説です。Incel organ donors should be allowed to sleep with recently deceased femalesという主張を読み、小説にしてみました。
***
1
僕は僕の死を楽しみにしている。
と言っても、決して今すぐ死にたいという意味ではない。多分僕の死はそんなに近い将来ではないと思う。
生存の苦しみから逃れたいというわけでもない。僕はこの人生を楽しんでいる。ただ、あと20年ばかり早く生まれていたらこんなに人生を楽しめたか、心許ない。
僕が自分の死を楽しみにするのは、それが誰かの命を救うだろうからだ。人間は社会的な動物だという。誰かの役に立つということほど僕の心を満たしてくれるものはない。
決して善人ぶってそんなことを言うのではない。ステーキは舌に快い。セックスは性器に快い。それと同じように、人の役に立つことは精神に快い。ただの生理現象だ。
人間が生きていくためには臓器が必要だ。しかし往々にして人間の臓器は病気や事故で壊れてしまう。人の数は多く、臓器の数は少ない。人が死んだとき、遺体から臓器を取り出して生きている人に移植すれば、移植を受けた人はそれからも生きていくことができる。昔の人はよくぞこんなことを思いついたものだと感心する。
僕が死んだとき、僕の体はバラバラにされて、その大部分は臓器の必要な人に提供されることになっている。僕が――それは僕だったものだと言う人もいるだろう。それは正しい。でもどちらでもいいことだ――人々の、社会の役に立つのだ。こんなに嬉しいことはない。
遺体は資源だ。限りある資源だ。
2
病院の敷地内に設置されたその霊安所は、病院というよりは宗教施設のような雰囲気を湛えている。ここ10年ばかりの間に、大きな病院は病院内にわざわざ一棟の霊安所を設けるようになった。
昔だったらそんな縁起でもない建物が患者の目につくことは嫌われただろう。しかし今では患者にとって、誰かの死は自らの死よりは自分の生還を連想させるものになりつつある。誰かが死ねば、その遺体はばらばらにされて、誰かの生きるための糧になる。
僕は受付で身分証明書を提示する。受付の事務員が機械でそれを読み取ると、「4」と書かれた札を渡し、「4番でお呼びしますので、しばらくお待ちください」と告げた。「死」番か。縁起がいい。
しばらく待ってから事務員に「第4霊安室」と書かれたプレートのある部屋に連れていかれる。心臓が高鳴ってきた。
「それではごゆっくりどうぞ。終わったら札を持って受付までお越しください」
事務員は言い慣れた定型句のように一本調子で告げると、足早に去っていく。
ドアを開けると、少し異様な空間だ。部屋の真ん中にはフリルのついた少しどぎついピンクのベッドが置かれ、その上ではベッドのピンクに不釣り合いに殺風景な銀色のシートが、ベッドの上に置かれたものを覆って膨らんでいる。ベッドの枕元には祭壇が設けられている。祭壇には、位牌、菊と梻の花瓶、線香立てと箱に入った線香、ライターと蝋燭、おりんが並んでいる。
置かれたものは全て霊安室のそれなのだが、ラブホテルのようなベッドのピンクだけがあまりに釣り合っていない。
高鳴る心臓を押さえながら銀色のシートを巻き取り、床に置く。死装束を身に纏い、顔に白い布をかけた少女が姿を現す。
この姿を見ると、僕は毎回震えてしまう。震える手で線香に火を点けて立てる。
チィーン・・・
おりんを鳴らすと目を閉じて両手を合わせ、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と唱える。
白い布を外す。痩せこけた少女の蒼白い顔をごまかすように綿が口いっぱいに詰められている。痩せ細った哀れな姿ではあるが、まだ少しあどけなさを残す容姿は、美しく整っている。
髪は鬘だ。この少女はがんに侵されて処女のまま亡くなったのだという。抗がん剤のために髪は抜け落ちたが、結果としては数年の延命に過ぎなかった。適合する臓器提供者がいれば、もう少し長く生きることができただろう。
痩せさらばえた冷たい手を握る。
「可哀想に」
そう呟きながらも、その少女の肉体への欲望は僕の心の中で熱く燃え上がってきた。
左前の経帷子を開く。薄い陰毛に包まれた陰裂を見て、僕の陰茎は「今すぐこの中に入りたい」と主張するように硬くなる。ズボンが苦しいので脱ぎ捨てる。
小ぶりだが形のいい乳房を揉んでみる。ふにゃふにゃとして冷たい。
ローションを手に取り、少女の膣と自分の陰茎に塗りたくる。少女の膣の冷たさと自分の陰茎の熱さが指に不思議な感覚を齎す。膣に指を出し入れしてみたりクリトリスをいじってみたりするが、少女は何も言わない。吐息一つ漏らさない。
「ああっ、もう我慢できない!」
僕は少女の上にのしかかり、膣に一気に陰茎を挿入する。
ブチュリッ!
「うあぁ!」
少女の冷たい膣が陰茎を包み込む。
ズポッ、ズポッ、ズポッ・・・!
僕は夢中で腰を少女の冷たい膣にぶつける。欲望のすべてをぶつけて快楽をむさぼるのだ。
少女の胸の感触を手で楽しみ、膣の感触を陰茎で楽しむ。可愛い女の子の遺体が至高の快楽を与えてくれる。
動くごとに僕の息は荒くなるが、少女は何の反応も返さない。ただ僕の腰の動きにしたがってカクカクと揺れるだけだ。
「んくぅっ、イくっ!」
ドピュッ! ドクン、ドクン・・・!
熱い精液が冷たい膣に迸る。僕は快感に打ち震えながら、ありったけの欲望を、遺体のもう永遠に妊娠することのない子宮に流し込む。
そのとき、ちょうど線香が燃え尽きようとしていた。
3
遺体は貴重な資源だ。科学が発展しても、人体から取り出せばわけもないのに一から作るとなれば容易でないものがたくさんある。
移植のための臓器もそうだが、このような少女の肉体も貴重な資源だ。病に侵されて内臓は移植に使えないほどぼろぼろになっていても、屍姦すれば気持ちいい。屍姦は気持ちがいいが、いくら望んでも望みを果たすのは容易でない。
そこで、脳死後の臓器提供の意思表示をした者は、遺体とのセックスを許されるという制度ができた。自分の好みのタイプの相手を臓器移植機関に登録しておけば、それにマッチする死者が出たときに病院から連絡が来るようになっている。
僕はこの制度に登録し、時々女性の遺体とのセックスを楽しんでいるのだ。
臓器提供によって助かる命があり、屍姦用遺体提供によって満たされる性欲がある。誰も害されず、誰も損をしない。
彼女の遺体が僕に生きる喜びを与え、僕の遺体はいつか誰かの命を救う。こうして命は回ってゆくのだ。
霊安所を出る。青く澄み渡る初夏の空に、爽やかな風が吹き抜けた。まだ掌に少女の遺体の冷たい乳房の感覚が快く残っている。
(完)
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1
僕は僕の死を楽しみにしている。
と言っても、決して今すぐ死にたいという意味ではない。多分僕の死はそんなに近い将来ではないと思う。
生存の苦しみから逃れたいというわけでもない。僕はこの人生を楽しんでいる。ただ、あと20年ばかり早く生まれていたらこんなに人生を楽しめたか、心許ない。
僕が自分の死を楽しみにするのは、それが誰かの命を救うだろうからだ。人間は社会的な動物だという。誰かの役に立つということほど僕の心を満たしてくれるものはない。
決して善人ぶってそんなことを言うのではない。ステーキは舌に快い。セックスは性器に快い。それと同じように、人の役に立つことは精神に快い。ただの生理現象だ。
人間が生きていくためには臓器が必要だ。しかし往々にして人間の臓器は病気や事故で壊れてしまう。人の数は多く、臓器の数は少ない。人が死んだとき、遺体から臓器を取り出して生きている人に移植すれば、移植を受けた人はそれからも生きていくことができる。昔の人はよくぞこんなことを思いついたものだと感心する。
僕が死んだとき、僕の体はバラバラにされて、その大部分は臓器の必要な人に提供されることになっている。僕が――それは僕だったものだと言う人もいるだろう。それは正しい。でもどちらでもいいことだ――人々の、社会の役に立つのだ。こんなに嬉しいことはない。
遺体は資源だ。限りある資源だ。
2
病院の敷地内に設置されたその霊安所は、病院というよりは宗教施設のような雰囲気を湛えている。ここ10年ばかりの間に、大きな病院は病院内にわざわざ一棟の霊安所を設けるようになった。
昔だったらそんな縁起でもない建物が患者の目につくことは嫌われただろう。しかし今では患者にとって、誰かの死は自らの死よりは自分の生還を連想させるものになりつつある。誰かが死ねば、その遺体はばらばらにされて、誰かの生きるための糧になる。
僕は受付で身分証明書を提示する。受付の事務員が機械でそれを読み取ると、「4」と書かれた札を渡し、「4番でお呼びしますので、しばらくお待ちください」と告げた。「死」番か。縁起がいい。
しばらく待ってから事務員に「第4霊安室」と書かれたプレートのある部屋に連れていかれる。心臓が高鳴ってきた。
「それではごゆっくりどうぞ。終わったら札を持って受付までお越しください」
事務員は言い慣れた定型句のように一本調子で告げると、足早に去っていく。
ドアを開けると、少し異様な空間だ。部屋の真ん中にはフリルのついた少しどぎついピンクのベッドが置かれ、その上ではベッドのピンクに不釣り合いに殺風景な銀色のシートが、ベッドの上に置かれたものを覆って膨らんでいる。ベッドの枕元には祭壇が設けられている。祭壇には、位牌、菊と梻の花瓶、線香立てと箱に入った線香、ライターと蝋燭、おりんが並んでいる。
置かれたものは全て霊安室のそれなのだが、ラブホテルのようなベッドのピンクだけがあまりに釣り合っていない。
高鳴る心臓を押さえながら銀色のシートを巻き取り、床に置く。死装束を身に纏い、顔に白い布をかけた少女が姿を現す。
この姿を見ると、僕は毎回震えてしまう。震える手で線香に火を点けて立てる。
チィーン・・・
おりんを鳴らすと目を閉じて両手を合わせ、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と唱える。
白い布を外す。痩せこけた少女の蒼白い顔をごまかすように綿が口いっぱいに詰められている。痩せ細った哀れな姿ではあるが、まだ少しあどけなさを残す容姿は、美しく整っている。
髪は鬘だ。この少女はがんに侵されて処女のまま亡くなったのだという。抗がん剤のために髪は抜け落ちたが、結果としては数年の延命に過ぎなかった。適合する臓器提供者がいれば、もう少し長く生きることができただろう。
痩せさらばえた冷たい手を握る。
「可哀想に」
そう呟きながらも、その少女の肉体への欲望は僕の心の中で熱く燃え上がってきた。
左前の経帷子を開く。薄い陰毛に包まれた陰裂を見て、僕の陰茎は「今すぐこの中に入りたい」と主張するように硬くなる。ズボンが苦しいので脱ぎ捨てる。
小ぶりだが形のいい乳房を揉んでみる。ふにゃふにゃとして冷たい。
ローションを手に取り、少女の膣と自分の陰茎に塗りたくる。少女の膣の冷たさと自分の陰茎の熱さが指に不思議な感覚を齎す。膣に指を出し入れしてみたりクリトリスをいじってみたりするが、少女は何も言わない。吐息一つ漏らさない。
「ああっ、もう我慢できない!」
僕は少女の上にのしかかり、膣に一気に陰茎を挿入する。
ブチュリッ!
「うあぁ!」
少女の冷たい膣が陰茎を包み込む。
ズポッ、ズポッ、ズポッ・・・!
僕は夢中で腰を少女の冷たい膣にぶつける。欲望のすべてをぶつけて快楽をむさぼるのだ。
少女の胸の感触を手で楽しみ、膣の感触を陰茎で楽しむ。可愛い女の子の遺体が至高の快楽を与えてくれる。
動くごとに僕の息は荒くなるが、少女は何の反応も返さない。ただ僕の腰の動きにしたがってカクカクと揺れるだけだ。
「んくぅっ、イくっ!」
ドピュッ! ドクン、ドクン・・・!
熱い精液が冷たい膣に迸る。僕は快感に打ち震えながら、ありったけの欲望を、遺体のもう永遠に妊娠することのない子宮に流し込む。
そのとき、ちょうど線香が燃え尽きようとしていた。
3
遺体は貴重な資源だ。科学が発展しても、人体から取り出せばわけもないのに一から作るとなれば容易でないものがたくさんある。
移植のための臓器もそうだが、このような少女の肉体も貴重な資源だ。病に侵されて内臓は移植に使えないほどぼろぼろになっていても、屍姦すれば気持ちいい。屍姦は気持ちがいいが、いくら望んでも望みを果たすのは容易でない。
そこで、脳死後の臓器提供の意思表示をした者は、遺体とのセックスを許されるという制度ができた。自分の好みのタイプの相手を臓器移植機関に登録しておけば、それにマッチする死者が出たときに病院から連絡が来るようになっている。
僕はこの制度に登録し、時々女性の遺体とのセックスを楽しんでいるのだ。
臓器提供によって助かる命があり、屍姦用遺体提供によって満たされる性欲がある。誰も害されず、誰も損をしない。
彼女の遺体が僕に生きる喜びを与え、僕の遺体はいつか誰かの命を救う。こうして命は回ってゆくのだ。
霊安所を出る。青く澄み渡る初夏の空に、爽やかな風が吹き抜けた。まだ掌に少女の遺体の冷たい乳房の感覚が快く残っている。
(完)